IoBミドルウェア

IoBミドルウェア

概要

「IoBミドルウェア」では、脳活動から抽出した情報を脳からコンピューター、または脳と脳の間で直接共有するテクノロジーの実現を目指します。

具体的には、脳活動から感覚や思考の情報を抽出できる新たな人工知能の開発と、抽出された情報の共有を実現する数理理論の構築、さらに動物実験による技術検証を行います。

脳と脳との直接的なコミュニケーションの実現には、「個々の脳で用いられているコードを解読する技術」と、「解読したコードを脳から脳へと送信する技術」が不可欠です。

脳が使用するコードは私たち一人一人の間で異なる可能性が高く、複数の脳の間でコードを対応づける作業(「翻訳」)が必要となります。

また、脳活動をもとにデバイスを操作する場合にも、脳とデバイスの間でのコードの翻訳が必要です。

異なるシステム間での情報翻訳技術は本プロジェクトを成功に導くための中核技術の1つであり、その構築のための数理理論を整理し、工学的実装を達成するのが本項目の主たる目標です。

メンバー

  • 笹井 俊太朗
    SASAI Shuntaro

    株式会社アラヤ 脳事業研究開発室 チームリーダー

    脳とAIや、脳と脳などの異なる情報システムの間で情報通信を行うためには、各システムが持つ情報を他のシステムが理解できるよう適切に変換する技術が必要になります。本研究では、各システムの持つ情報表現の構造を、異なるシステムの間で合わせこむ手法を開発することで、この翻訳技術の構築を目指します。またヒトやサルから得られた神経活動データにこの手法を用いることで、個体間で情報表現が共通化できるかどうかを検証します。さらにこの技術を拡張して、複数のAIや脳によって利用可能な情報の共有空間の構築を目指します。

  • 林 隆介
    HAYASHI Ryusuke

    産業技術総合研究所 ニューロリハビリテーション研究グループ 主任研究員

    脳から神経情報を読み出し、アバター制御、ならびに脳と脳の間の情報通信を行うIoBを実現するには、脳やAIモデルごとに異なる概念情報の表現形式を共通化するための数理基礎を構築する必要があります。本研究では、おもに画像データから抽出される概念情報に注目し、その表現共通化を実現する数理的基盤技術の開発をめざします。さらに、脳の視覚野から神経情報データを計測し、開発技術の実験的検証に取り組みます。本研究をとおして、人間の能力拡張につながる技術開発に貢献したいと考えています。

  • 大泉 匡史
    OIZUMI Masafumi

    東京大学大学院 総合文化研究科 准教授

    研究では、制御理論あるいは非平衡統計力学の手法を用いることで、(1)脳活動から精神的疲労を推定、(2)脳と脳の間で直接的コミュニケーションを実現するための、最適な入力の推定を行います。より具体的には、確率的な(非)線形神経システムにおいて、脳状態間の遷移コストを定量化する理論的枠組みを構築し、遷移コスト、遷移効率という観点から、精神的疲労の推定及び、脳への最適制御入力の推定に取り組んでいきます。

  • ARULKUMARAN Kai
    Kai ARULKUMARAN

    株式会社アラヤ 脳事業研究開発室 チームリーダー

    本研究プロジェクトでは、自然言語やBMIなどにおける問題設定において、ユーザの目標を達成するために自律的に行動できるAIシステムを開発します。そのために、環境との相互作用や報酬信号に基づいてタスクの実行を学習するゴールベースの強化学習エージェントに注目します。また、継続的な学習能力により強化学習エージェントは配備後の変化にも対応する事が出来ます。さらに、人間などの他のエージェントの目標を推論して協調的に作業を行うマルチエージェントシステムを開発します。エージェントの形態は物理的なものにも、仮想的なものにもなり得、ロボット工学から仮想アバターまで幅広い分野への応用が可能な技術を開発します。

    •  
  • 暦本 純一
    REKIMOTO Jun

    東京大学大学院 情報学環 教授
    ソニーコンピュータサイエンス研究所 副所長

    本研究では、非侵襲・侵襲・非接触情報からの発話意図を解読する技術の開発を行います。発話意図した内容をこれらの信号より解読し、その内容を他者の脳へ入力するための課題を段階的に解決していきます。また、開発する心的状態の抽出技術を用いることで、熟練者のもつ感覚的な理解をもデータ化し個人にフィードバックすることで、言語伝達の難しい技能獲得の支援としての活用も目指します。本研究により、人間とコンピュータとの間の新しいインタラクション手段が可能になる期待しています。

  • 小池 英樹
    KOIKE Hideki

    東京工業大学 情報理工学院 教授

    本研究では、身体情報のみに着目した従来型の技能獲得研究に対し、身体情報に加えて脳情報を考慮に入れた技能獲得手法を開発します。具体的研究項目の1つ目として、特定の運動中の脳身体情報を計測し、深層学習を用いて極近未来の姿勢を予測する手法を開発します。また2つ目の研究項目として、仮想現実環境を利用して時空間を歪曲した技能獲得環境を新たに開発し、時空間歪曲が脳に与える影響を調べると同時に、計測される脳状態から最適な時空間歪曲パラメータを同定します。