ムーンショット目標1は「2050年までに、人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現」に向けて、サイバネティック・アバター(CA)を利用することで、誰もが自由に身体能力や認知能力を拡張し、生活に活用できる技術開発と社会への普及を目指します。
私たちは、研究開発プロジェクト「身体的能力と知覚能力の拡張による身体の制約からの解放」を進めています。
本プロジェクトの最終目標としては、ブレイン・マシン・インターフェイス(BMI)技術を活用し、脳がインターネットと繋がり、サイバー空間とリアル空間が融合したサイバーフィジカル空間でのCAを自在に操作したり、他者やAIと直接コミュニケーションしたりすることのできる「Internet of Brains (IoB)」の実現を目指しています。
この野心的な目標に対し、現在の取り組みは侵襲的や非侵襲的、極低侵襲的、更には非接触的なアプローチまで多様なBMIの開発・研究に焦点を当てており、先進的な技術開発を推進しています。さらに、現時点においては比較的基礎研究の段階にあるBMI技術を、発展の目覚ましいAI技術と組み合わせることで、段階的に実用レベルまで向上させていきます。そのために、国内外の研究者と積極的に連携し、多様な専門知識を結集することで、この分野の研究開発を加速させています。
また、このような技術が社会に導入される際には、倫理・法・社会・経済において多くの課題が想定されます。そこで、これらの課題にも社会のみなさんとの継続的な対話によって得た意見を反映しながら先見的に取り組み、使用に向けたガイドラインを示しつつ、実用化にふさわしい技術を社会実装していきます。
そのための第一歩として、「ブレイン・テックガイドブック」と「ブレイン・テックエビデンスブック」を公開しました。ガイドブック・エビデンスブックの継続的な更新を行うことで、多くの新技術を生み出していくことのみならず、産業化による経済効果が生まれることを期待しています。
さらに、その効果が関連する基礎研究にも波及してフィードバックを与え、経済と基礎研究間で循環する『新しいサイエンス』の発展にもつながることを願っています。
金井 良太
KANAI Ryota
株式会社国際電気通信基礎技術研究所 事業開発室 担当部長
株式会社アラヤ 代表取締役